専門家による調査結果の要約
専門家による調査結果の要約
平成13年4月19日 私たちが快適な暮らしを送るためには、排出されるさまざまな遺物を処理する施設が必要不可欠です。
しかし、産業廃棄物が周辺の土壌や河川を汚染し、住民の生活を脅かす例が全国各地で多発しています。一旦、有害物質等の汚染が広がってからでは、元の姿に戻すことは容易ではありません。
苣原町に計画中の産業廃棄物処理施設も、その下流に天理ダムという私たち7万市民の大切な水がめを控えています。そこで今回は、施設とダムの水質との因果関係について、専門家の調査結果を紹介します。 ◆ 処分場計画の概要 産業廃棄物の最終処分場として、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス及び陶磁器くず、建設廃材の安定5品目を埋め立てる計画。埋立面積は51,219平方メートル、埋立容量は681,200m3(うち廃棄物埋立容量545,000m3
) ◆ 地質・地下水の面から 大阪市立大学理学部教授 熊井久雄氏の調査結果 (要約)
計画地には、花崗岩及び礫層が分布する。本施設では、地盤掘削の後に水に対する遮断施設を設けずに産業廃棄物を埋め立てるので、予定地に降った雨水は廃棄物層から下のマサ状風化花崗岩に浸透する。その地下水は、予定地南の布留川支流や布留川本流に流出し、天理ダムに流れ込むと考えられる。
また、埋め立てられる廃棄物の厳重な選別が行われなければ、有害な物質が混入する可能性がある。そのほか、廃プラスチックに含まれる可塑剤が環境ホルモンの一種であることが知られるようになった。建設廃材であるコンクリートは地下水のPH(水素イオン濃度)等水質を変化させ、ヒ素や鉛の溶出を促進させる可能性がある。有害物質が表流水や地下水に溶出して、天理ダムに流入することになれば大変な事態を招きかねない。 ◆ 水質の面から 環境計量士 中地重晴氏の調査結果 (要約)
本件施設計画には、廃棄物層からの排水や浸出水の水量や水質についての記述がなく、降雨が廃棄物層を通過し有害物を溶出させながら地下水になるとき、どの程度の水質になるかという点を、申請者が評価していない。参考に、奈良県が許可した既存の安定型産業廃棄物最終処分場の排水調査結果を見てみると、2つの施設では、COD(科学的酸素要求量)、BOD(生物的酸素要求量)が水質汚濁防止法の排水基準を越えていたり、鉛やカドミウム、ヒ素等の重金属が環境基準を越えて検出されている。また、他の一施設からの浸出水は、全窒素が排出基準を越えている。仮にこの施設からCOD40ミリグラム/リットル(総理府、厚生省共同命令の基準)、全窒素40ミリグラム/リットルの水質の浸出水が天理ダムへ流入すると、CODと全窒素を平均して0.12ミリグラム/リットル増加させることとなります。現在でも仁興口で1ミリグラム/リットル超の全窒素が検出されており、それが10%程度増加すれば、天理ダムの富栄養化に拍車がかかることになる。さらに、危惧されることは、市の水道水質への影響で、有機物濃度が増加すれば、浄水過程で添加される塩素によって、発癌物質であるトリハロメタンが増加することになる。水道水質の悪化は、確実であると予想される。
このように二人の専門家の調査結果より、廃棄物からの浸出水が地下浸透し天理ダムに流入して、水道水の水質悪化につながる危険性が指摘されています。
水道水源の汚染という「負の遺産」を、後世に残すことはできません。市では、この施設の設置計画に対し、断固反対したいと思います。
更新日:2021年03月05日